産業用ヘンプの可能性:自動車業界におけるサスティナブルな未来への一歩

ボディの一部が、ヘンプで作られているポルシェのレーシングカー

産業用ヘンプは、世界中で増加している人気のある植物で、植物の新たな視点と活用法に可能性を秘めています。現在、自動車業界もヘンプを製造プロセスに統合する多様な方法を模索しています。

ヘンプと自動車:その歴史と現状

1941年、ヘンリー・フォードは、様々な植物の繊維から作られたコンポジット素材(バイオプラスチック)でほぼ完全に構成された車のプロトタイプを公開しました。その素材の一部として使用されていた植物繊維の一つがヘンプでした。ヘンプ繊維を自動車部品に取り入れた最初のエンジニアとして知られるヘンリー・フォードですが、実際には、バイオプラスチックは70%のセルロース繊維と30%の樹脂バインダーで構成されており、そのセルロースの内訳はヘンプがわずか10%程度でした。

1941年、フォードが開発したヘンプカー

フォードの車は、最初の「ヘンプカー」として歴史に名を刻みましたが、「大豆車」の方が理論的には正確な呼び名でしょう。当時、フォードは彼のバイオプラスチック車が、当時の鋼鉄製のモデルよりも安全で軽く、そして大幅に安価であると確信していました。また、この車は鋼鉄の10倍の衝撃抵抗力があると言われていました。フォードは農業の大きな支持者であり、それが産業と一日共生関係を築く可能性があると信じていました。また、自動車部門は、農産物から作られたバイオプラスチックの新たな利用法を見つけることができる多くの産業の一つに過ぎないということも理解していました。

しかしながら、第二次世界大戦中の自動車生産の停止により、フォードのバイオプラスチック製の車を用いた持続可能な解決策の開発は結実しませんでした。約100年後の現在、世界中のさまざまな企業が再び産業用ヘンプの価値に目を向けるようになったのです。

未来への一歩:ヘンプカーの進化

2016年、実業家のブルース・ディッツェンはヘンリー・フォードに触発され、100%のヘンプコンポジットでスポーツカーを製作するために約20万ユーロを投資しました。その結果、極めて軽くて頑丈な車が生まれ、そのボディは鋼鉄の10倍の強さで、非常に凹みにくいという特性を持っています。

ヘンプコンポジットとは

強度,剛性,軽量化などの特性向上のために,2種類以上の性質が異なる素材を,それぞれの相を保ったまま界面で強固に結合し,合体・複合した材料のこと。(コトバンクより引用)

ヘンプ繊維は、最も一般的な有機ポリマーであるセルロースの約70%を含んでいます。したがって、パフォーマンスの観点から言えば、ヘンプは理論的には適切な原材料と見なすことができます。ヘンプベースのバイオプラスチックは、ガラス繊維や鋼鉄と比較して密度が低いため、製品の重量を減らすことができます。また、炭素繊維と比べて壊れにくいです。

しかし、ヘンプコンポジット材料の生産に必要なコストと時間は自動車業界にとって大きな障壁となっており、これが大量生産が現実的でない理由となっています。

とはいえ、個々の自動車部品の製造にヘンプバイオプラスチックを使用するというトレンドは着実に増加しています。事実、産業用ヘンプは現在、自動車部品の製造に使用される最も一般的な天然繊維の一つとなっています。

ヘンプと自動車産業:未来への道

気候変動の懸念、エネルギー資源の枯渇、そしてサステナビリティへのより強い意識が高まる中で、ヘンプのような持続可能な素材への需要が増えると考えられます。産業用ヘンプは地球にやさしい素材として認知されており、その環境への影響は大幅に小さいとされています。

自動車産業は現在、ヘンプをより多くの部品に統合する方法を模索しており、その潜在的な利点により、ヘンプは自動車製造の未来を形成する可能性があります。ヘンプは、再生可能で持続可能な素材として、環境問題に対する解決策を提供することができます。そのため、未来の自動車産業は、ヘンプと共に進化するかもしれません。

この記事を友達に教える

この記事を書いた人

国内外問わず、CBDをはじめとし、「大麻」に関する最新情報を発信していく総合ヘンプメディア THE HEMP TIMES

日本人が持つ「大麻」への認識を変えたい、というミッションをもとにTHE HEMP TIMESは運営されております。

※本サイトは法を遵守しており、大麻取締法を犯す事を「扇動・教唆・示唆・ほう助」する目的はありません。

目次